『イヴの時間 劇場版』や『サカサマのパテマ』などの吉浦康裕が原作、監督、脚本を担当した長編オリジナルアニメーション。抜群の運動神経、天真爛漫な性格で、さらに何かとすぐに歌いだす転校生が周りの人ーを少しずつ変えていく様子を映し出す。女優・土屋太鳳をはじめ、福原遥、工藤阿須加、興津和幸、小松未可子他らが声優として出演した。
劇場予告のありがちっぽさ満載の映像は正直わざわざ観に行くこともないかなと思ってしまった作品です。
SNSでの絶賛ツイートの数々を見なければおそらく観なかったと思います。それだけにあの予告編はどうにかならなかったのかと思わずにはいられません。
まず結論。
すごく面白かった。108分、十二分に楽しめる娯楽作です。
それだけに興行成績は振るわないだろうと分かってしまうのはとても辛い。
カテゴリーは男女5人+AIロボットのジュブナイルもので間違いないのですがそれでひとくくりにしてしまうのも違うなぁと思います。
確かに前半はAIロボのシオンが引き起こすあれやこれやに巻き込まれつつかけがえのない友達になっていく5人の物語が中心ではあるのですが終わってみると(誤解を恐れずに言えば)それは物語を盛り上げる舞台装置にすぎず後半はAIシオンを中心とした物語に大きく舵を切っていきますが焦点の比率を徐々にシオンにずらしているので中心が自然にシオンへと移っていくシームレスな展開の心地よさよ。
今作はミュージカルムービーと銘打っていて実際序盤は唐突に歌い出すシオンに違和感しか覚えません。ですが裏を返せば印象付けられるわけで、終盤の全てをひっくり返す展開、印象付けられたシーンの数々を思い出しながらカチカチとピースがはまっていく感覚は気持ちがよくかつ涙腺を激しく刺激します。
そして最後はもう一度シオンから離れての着地という収まりの良さ。
細やかな演出チューニングも冴え渡っていてアニメ製作者のプロの仕事を感じました。本当に観終わった後の気持ちの良さは一級品なので観ていただきたい作品ですね。
最後にちょっとこじつけかも知れませんが同じAIを取り扱った洋画作品「フリーガイ」にもあった製作者の想いがAIを通じて伝わる展開はとてもお気に入りです。「ゲーム」じゃ負けだけど「映画」じゃ勝ちなんよ(笑