巨匠リドリー・スコット監督が、歴史学者たちの間で意見の分かれる実話を映画化したミステリー。女性が声を上げられなかった中世フランスで、自らの主張を証明しようとする女性とその証明のため行われる“決闘裁判”に臨む彼女の夫とその友人の姿を描く。ジョディ・カマー、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレックらが共演する。
この作品の特徴的なのは決闘までに至る過程で三者三様(被害者の女性、その夫、容疑者の男)の視点から3つパートで描いている所。
同じシーンでも当事者の心理が反映されていてセリフや行動が微妙に異なります。
特徴的だったのは女性が一人で留守番しているところへ容疑者の男が強姦を強行した一連のシーン。
男の視点からだと女性は襲われている割には今ひとつ危機感に欠けるゆったりとして動きでもしかしたら潜在的には求めていたのではと思ってしまうのですが女性視点だと初めから終わりまで始終大暴れで男が去った後は屈辱で感情がグチャグチャになっているところが描写されています。
1視点からでは真実は見えないと言う典型的な例を視覚で魅せるのは良い手法だと思いました。女性の夫視点も女性視点の話が進んでくると夫の考えた方がこうだから同じシーンでもこう違うんだなと納得出来るシーンがあったりでミステリー物ではありがちではありますがこうも徹底すると逆に新鮮。
他に印象深いキャラとしては女性の友人かな。彼女は旦那に不満があって容疑者の男がハンサムなので気になっています。それは女性視点のときに
友人「あの人素敵よね」
女性「ハンサムだけど、信用できない」
という会話で判明しますが裁判になったとき彼女は前半の「ハンサム」と言う部分だけ証言して友人である女性を貶めようとしました。なんで私ではなく友人である女性を襲ったことに同情ではなく嫉妬が勝ってしまったと言う話ですがこの醜い感情の続きがその後もちょいちょい出てくるのが監督のいやらしい部分(褒めてる)かなと。これに限らず夫の母親の件とか女性同士のやり取りも見どころがあります。
最後の決闘シーンは作品のオチを考えるとなるようになるところで落ち着いているのですが結構引っ張るのでドキドキものでした。
しかし強姦罪を立証するのに証拠じゃなくて決闘とか負けたら悲惨な末路が待っているとかこの時代の女性には本当に人権がなかったんだなぁと痛感させる作品でした。
2時間半はちょっと長すぎでしたが良い作品です。